株式会社商船三井 2024年度WEB版中間報告書
REPORT 1
低炭素燃料の活用で足元からGHG排出を削減
万博で示す未来の船
当社グループでは、経営計画{「BLUE ACTION}^{ ブルーアクション} 2035」の主要戦略の一つである「環境戦略」に基づき、船舶の動力源としてクリーンエネルギーの導入を進めています。グループ全体で2050年のネットゼロ・エミッションを達成するため、2020年代中にネットゼロ・エミッション外航船の運航開始を目指しています。また、ゼロエミッション燃料に関する技術やインフラが成熟するまでの間も、足元から取り組める低炭素の燃料であるLNGやメタノールを利用することで温室効果ガス(GHG)排出量を減らしていきます。
株主の皆様に乗船いただける船では、当社グループの商船三井さんふらわあが運航するフェリー4隻にLNG燃料の導入を進めています。2023年に、日本初のLNG燃料フェリーとして大阪―別府航路に「さんふらわあ くれない」と「さんふらわあ むらさき」が就航しましたが、これに続いて、2025年初頭から大洗-苫小牧航路に順次「さんふらわあ かむい」と「さんふらわあ ぴりか」を投入します。煙突からの煙やにおいがほとんど発生せず、環境に優しいことに加えて、エンジンの振動と騒音が非常に少ないので、とても乗り心地のよいフェリーです。
外航船では、2030年までにLNGまたはメタノールを燃料とする船を90隻に増やす計画です。これまでに計38隻(2024年6月時点・含建造中)への導入を決めました。このうち、「BLUE(ブルー)」シリーズと名付けたLNG燃料自動車船は、2025年までに8隻が竣工する予定で、2024年3月と7月に最初の2隻が完成しました。2024年7月15日の「海の日」には、2隻目「TURQUOISE ACE(ターコイズ エース)」の見学会を東京港で開催し、小中学生親子を含む一般の方々に、地球環境に配慮した最新の船をご覧いただきました。
■船種別のLNG燃料船整備実績(2024年6月時点)
船 種 |
隻 数 |
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外航船 |
ばら積み船 |
ケーブルサイズバルカー13隻(うち2隻就航済) +その他バルカー2隻(うち1隻就航済) |
自動車船 |
14隻(うち3隻就航済) |
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タンカー |
VLCC4隻+ケミカルタンカー4隻 |
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内航船 |
タグボート |
1隻(就航済) |
フェリー |
4隻(うち2隻就航済) |
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内航貨物船 |
1隻(就航済) |
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合計 |
外航船:37隻、内航船:6隻 |
GHG排出を無くすゼロエミッション船にとどまらず、風の力を掴み、洋上でエネルギーを創って陸に届ける、グリーン水素製造・輸送船の開発も進めています。クリーンで無尽蔵にある洋上の風力を利用して、水素を製造・貯蔵・運搬する「ウインドハンタープロジェクト」です。強風時には帆を展張して風を捕らえ船を進めるとともに、水中でタービンを回して発電し、海水から作った純水を電気分解することにより水素を創り、水素キャリアの一つであるメチル・シクロヘキサン(MCH)の形に変えて船内に貯めておきます。弱風時は帆を収縮させた上で、貯蔵されているMCHから水素を取り出し、水素を燃料電池に投入して発生させた電力で推進プロペラを回転させ推進します。
2021年には長崎県の大村湾でヨット「ウインズ丸」による実証運航を行い、発電→水素生産→貯蔵→燃料電池発電→推進のサイクルが成立することを世界で初めて実証しました。2023年度からは、船内でつくった水素を陸に揚げて利用する東京都のプロジェクトにも参加しています。ウインドハンターは推進エネルギーに化石燃料を一切使用しないゼロエミッション船であるだけでなく、動く洋上風力発電と水素生産設備が融合したハイブリッドプラントであり、洋上で製造した水素を陸上に届けることで水素社会に貢献する船です。引き続き開発を進め、2030年までに大型の水素生産船を建造することを見据えています。
当社は2025年4月から10月に開催予定の大阪・関西万博に出展し、ウインドハンターをはじめ、未来社会における新しい船の可能性を紹介します。全長3mを超えるウインドハンターの模型を設置し、帆に向かって風を起こすと、模型の帆や大型スクリーンが連動してウインドハンターの仕組みを体感いただける、参加型アトラクションをご用意してお待ちしています。未来のショーケースとなる万博で、環境に配慮した未来の船をぜひ多くの皆様にご覧いただきたいと思います。
展示コンセプト『{WIND VISION}^{ウインドビジョン}』(イメージ)
- BLUE ACTION 2035 (7,006KB)