株式会社商船三井 2024年度WEB版中間報告書

 

REPORT 2

地域主導でプロジェクト進行
各地でFSRU傭船契約やオフィスビル開発

インドでのオフィスビル開発
{Atrium Place}^{アトリウムプレイス} プロジェクト」の完成イメージ

 当社はグループ経営計画{「BLUE ACTION}^{ ブルーアクション} 2035」において「グローバルな社会インフラ企業への飛躍」を掲げており、「地域戦略」を主要戦略の一つとして定め、取り組んでいます。世界の主要な経済圏を臨むエリアで、当社の各地域組織が意思決定、事業開発、運営にあたり主体的に役割を果たすことで、世界のマーケットで社会インフラ企業グループとしての存在感を発揮していきます。

 

 地域組織の設置以前は、各地域から挙がってきた案件に対し、商船三井本社が中心となって意思決定をしていましたが、そのスタイルを大きく変え、各地域組織に権限を大幅に委譲しました。日本を除く世界を「東アジア」「東南アジア・大洋州」「南アジア・中東」「欧州・アフリカ」「米州」の5地域に分け、各地域専任の執行役員を任命し、同時に営業・コーポレート機能それぞれの統括責任者を配置しました。これにより、意思決定の質とスピードを高める体制を整えました。

 

 地域戦略を先行して進めてきたのがインドです。エネルギー需要が拡大する同国では、LNG(液化天然ガス)、エタン、LPG(液化石油ガス)、原油などのエネルギー輸送事業で大きな成果を上げています。海運事業だけでなく、もう一つの主要戦略である「ポートフォリオ戦略」として強化している非海運事業でも新たな取り組みが実りました。不動産事業を展開するグループ会社のダイビルが進めるオフィスビル開発です。同国北部の主要都市デリー近郊でオフィスビル4棟などを建設する「{Atrium Place}^{アトリウムプレイス} プロジェクト」に参画。2025年にビルが竣工する予定です。

FSRUのイメージ写真(右がFSRU)
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FSRUのイメージ写真(右がFSRU)

 インドをモデルケースとして他の地域でも取り組みを進めている中で、さまざまな成果が出てきました。その一つが欧州・アフリカ地域のプロジェクトです。当社は2024年、ポーランド国営ガスパイプライン会社である{GAZ-SYSTEM}^{ガスシステム}社と、LNGを洋上で貯蔵したり再ガス化して陸上へ送り出すことができる浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)を長期で貸し出す契約を締結しました。当社は世界有数のFSRU保有・運営会社ですが、この、ポーランドで初めて導入されるFSRUは、バルト海に面するグダンスク港の沖合に新設される浮体式LNG受入ターミナルの中心的な設備になる予定です。同国のエネルギー安全保障に貢献する事業となることから、欧州委員会からも地域密着型のインフラプロジェクトとして高い関心が寄せられています。

 私たちは数年前からこのプロジェクトに注目し、2022年から取り組みを本格化しました。地域組織の担当執行役員と営業統括責任者をリーダーとして、欧州・アフリカ地域を統括するロンドンの{MOL(Europe Africa)}^{エムオーエルヨーロッパアフリカ}社に、プロジェクトマネージャー、営業担当、技術担当から成るプロジェクトチームを設置しました。このプロジェクトチームが、プロジェクト推進において中心的な役割を果たしました。

 もう一つが東南アジア地域のシンガポール国営LNGターミナル運営会社 {Singapore LNG Corporation}^{シンガポールエルエヌジーコーポレーション}社向けのFSRUになります。シンガポール初のFSRUで、本船はシンガポールのジュロン港に係留され、LNGの受入れ、貯蔵と陸上への送出が可能となります。シンガポールの国内発電量の約95%の燃料を輸入天然ガスで賄う同国のエネルギー安定供給に貢献するインフラプロジェクトです。

本船イメージ(提供:Hanwha Ocean Co., Ltd.)
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本船イメージ(提供:Hanwha Ocean Co., Ltd.)

 契約獲得に至ったことは、日本の海運会社として唯一、FSRU事業に参入して世界で実績を積んできた当社の技術力が活きただけでなく、地域組織が主導することで顧客の要請に時差なく機動的に対応し、意思決定を行ったことが大きく奏功したと考えています。この経験を活かし、これからも世界の主要経済地域で事業を拡大していきます。