株式会社商船三井 2022年度WEB版中間報告書

 

“風”を活かした新事業で
脱炭素に貢献

当社が台湾に投入するアジア初の洋上風車メンテナンス支援船
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当社が台湾に投入するアジア初の洋上風車メンテナンス支援船

当社は「海を知り、風をつかむ。」を合言葉として、「風」に関わる新たな事業に取り組んでいます。
その一つが洋上風力発電事業です。当社は2021年6月に発表した「商船三井グループ 環境ビジョン2.1」に基づき、自社からの温室効果ガス(GHG)削減と社会のGHG削減への貢献に取り組んでおり、洋上風力発電は後者に関わる事業と捉えています。洋上風力発電事業の開発、輸送・建設、操業開始後のオペレーションやメンテナンスといったあらゆる段階で、当社はグループを挙げて総合的なサービスを提供し、再生可能エネルギーを生み出す洋上風力発電の国内外での導入を支援します。
まず、海運会社である当社の得意分野として、風車をはじめとする風力発電設備の陸洋一貫輸送や、洋上風車メンテナンス支援船(SOV)、作業員輸送船(CTV)、海底ケーブル敷設船、洋上風力発電設備設置船(SEP船)など、洋上風車の建設や運営で用いられるさまざまな船を提供していきます。

特殊な技術を習得するための訓練も提供します。

今年6月に東京・虎ノ門の本社ビルのロビー階にダイナミックポジショニングシステム(DP)シミュレーターを設置し、グループ会社のMOLマリン&エンジニアリングが 運営するMOL DPトレーニングセンターを開設しました。

DPは船が洋上で定点保持するための技術で、SOVやSEP船などの操船で必要となります。

自社海技者のDP操作訓練を自営化するとともに、洋上風力発電や海洋開発に関わる特殊船向けの訓練を広く提供し、わが国の洋上風力発電の拡大に貢献しています。

DPシミュレーター
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DPシミュレーター

洋上風力発電に関わる人材については、フィリピンに会社を設立し、風車などをメンテナンスする人材の育成・供給事業も展開するほか、MOLマリン&エンジニアリングにおいても海技者・エンジニアの人材獲得と育成に取り組んでいます。
発電事業自体にも日本の海運会社として初めて参入しました。今年3月に東邦ガス、北陸電力とともに参画した台湾初の商用規模の洋上風力発電事業「フォルモサ1」を通じて発電事業の知見の習得を進め、日本国内における発電事業にも活かしていきます。

 

また、「風」に関わる取り組みとして、新しい形の「帆船」を造る「ウインドチャレンジャープロジェクト」を進めています。ウインドチャレンジャー帆と名付けた、垂直に伸縮可能な硬翼帆(こうよくほ、風により変形しない翼型の帆)を船上に設置して風力エネルギーを推進力に変換することで、動力源を化石燃料に頼っている大型商船の燃料消費量を減少させ、環境負荷低減を目指す試みです。搭載第1号は今年10月7日に大島造船所で竣工した東北電力向けのばら積み船「松風丸(しょうふうまる)」。硬翼帆を1基搭載することで、GHG排出削減効果は同じ船型の従来船に比べて、日本/豪州航路で5%以上、日本/北米西岸航路で8%以上を見込んでいます。また、最新の気象予報に基づき、風を最も効果的に推進力に変換できる航路の候補を示す専用のシステムも開発し「松風丸」に搭載しました。今後、当社は世界中のデータを集めて風の活用法をさらに探っていきます。

ウインドチャレンジャー帆を搭載した「松風丸」
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ウインドチャレンジャー帆を搭載した「松風丸」

ウインドチャレンジャー帆搭載第2号は2024年に大島造船所で竣工する予定のばら積み船で、木質バイオマスエネルギーの大手企業であるエンビバ・パートナーズ向けとなります。この船には英国のアネモイ・マリン・テクノロジーズが開発する風力を活用した推進補助装置「ローターセイル」を搭載することも検討しています。これらを併用した場合、同じ船型の従来船に比べ平均約20%のGHG削減効果を見込みます。
私たちがフィールドとする「海」で、「風」を活かした事業を展開し、低炭素・脱炭素社会の実現に貢献します。