株式会社商船三井 2023年度WEB版中間報告書
REPORT 1
米国ケミカル船社を買収
業界大手の地位がさらに強固に
当社グループは経営計画「{BLUE ACTION}^{ブルーアクション} 2035」で非海運事業の拡大を進めるとともに、海運を中心とする既存事業においても成長分野を定め、投資を継続しています。また、グローバルな社会インフラ企業グループとして世界のマーケットで存在感を発揮し、事業拡大を実現することを目標として、地域戦略を進めています。その一環として、当社が100%出資しているグループ会社、MOLケミカルタンカーズ(MOLCT)が米国船社フェアフィールド・ケミカル・キャリアーズ(FCC)を買収します。当社グループは、ケミカル船事業を成長分野の一つと定め、積極的に投資していく方針を掲げ、今後拡大していく液体化学品や動植物油の輸送需要とともに、この事業をさらに成長させていきます。
MOLCTは50年以上にわたってケミカル船事業を運営してきました。今では世界三指に数えられる大手ケミカル船社として成長を遂げ、当社グループの前期決算においても業績を大きく伸ばした部門の一つでした。新造船への投資や営業展開によって事業を拡大するとともに、同業他社のM&A(買収・合併)も実施してきました。今回の買収で、現在85隻で構成される船隊にFCCが運航する約40隻が加わり、船隊規模は120隻を超えます。
当社グループはケミカル船事業で世界有数の船社としての座をより強固にします。FCCの株式取得は、関係当局による競争法上の承認を取得した後に実施できる見込みです。
石油を原料として造られる化学品は、衣類や住宅、自動車をはじめ、私たちの身の回りのさまざまな製品に使用されています。このため、その輸送需要は世界の人口増加や経済発展とともに伸びていきます。化学品とともにケミカル船の主要な貨物となっている動植物油の需要も同様です。当社グループはケミカル船事業を拡大することで、世界中の人々の生活や経済活動を支えていきます。
ケミカル船は同じ船型であっても、貨物タンクの大きさ、タンクの材質や塗装はさまざまです。MOLCTはこれまで、輸送する貨物を選ばないステンレス製のタンクを多数搭載した船を世界中に配船し、多種多様な液体化学品、動植物油、潤滑油などの小口合積み輸送を手掛けてきました。小口貨物の集荷や、貨物を揚げ卸しするたびに必要になる貨物タンクの洗浄などで高い専門性を発揮しています。買収するFCCも同様のスタイルで事業を運営してきたので、買収による相乗効果を期待しています。
航路網もいっそう充実します。MOLCTは遠洋航路を中心とし、太平洋航路、米国ガルフ/アジア航路、中東/アジア航路、欧州/アジア航路、米州の南北航路、大西洋航路に配船しています。これにMOLCTにとって手薄だった南アフリカ航路など、FCCの航路網が加わります。
船隊や航路の拡充で営業基盤が強化され、これまで以上に多様な輸送需要に応えることができます。その上、配船効率を高め、収益力の向上につなげることができるでしょう。
- BLUE ACTION 2035 (7,006KB)