株式会社商船三井 2022年度WEB版中間報告書
不動産事業のダイビル、
次の100年へ海外展開加速
当社グループでオフィスビルの所有や賃貸を中心とする不動産事業を営むダイビルは、海外事業の拡大に取り組んでおり、現在、海外で3棟のオフィスビルを所有・運営しています。もともとは東京と大阪のオフィスビル事業を中心としてきましたが、更なる成長に向けて、ビルの開発、賃貸、管理運営、建て替えまでの長期一貫経営を通じてダイビルが培ってきたノウハウを海外にも展開することにしたものです。
これまでの実績として、まずは当社グループの海運・物流事業で関わりが深く、経済成長が期待できるベトナムに進出しました。2007年に検討を開始し、2011年には駐在員事務所を設置して本格的な活動を展開。その結果、2012年にホーチミンで「サイゴン・タワー」を、2014年にハノイで「コーナーストーン・ビルディング」を取得しました。日本の不動産会社がベトナムでオフィスビルを取得したのはダイビルが初めてです。ホーチミンで「グレードAビル」として認められる高品質オフィスビル12棟のうちの1棟である「サイゴン・タワー」は、この中で最も古い1996年竣工ながら高い評価を受けています。また、「コーナーストーン・ビルディング」の賃料はハノイのトップレベルです。そのサービスクオリティを評価いただけた結果だと認識しています。
ベトナムの次に進出したのが、不動産市場が成熟し、堅実な成長が期待できるオーストラリアです。2020年にシドニーで竣工した「275 George Street」は、ダイビルが海外で初めて開発段階から関与したプロジェクトです。
2023年に創業100周年を迎えるダイビルは、今年4月に当社の100%出資子会社となり、新たな一歩を踏み出しました。これにより投資力が拡大するとともに、当社グループが持つ国内外のネットワークをこれまで以上に活用できるようになり、更なる成長に向けた基盤が強化されました。当社グループは伝統的な海運業にとどまらず、社会インフラ事業をグローバルに展開することで更なる企業価値の創造を進めています。その中で不動産事業を重要な事業として位置付け、今年度から2024年度までに海外を含め少なくとも1,000億円を不動産事業に投資する計画です。
例えば、ハノイでは現在、新たなオフィスビルの開発に現地企業と連携して取り組んでいます。ベトナムでのオフィスビル開発は、出資者としてホーチミンの案件に参画したことがありますが、今回のハノイの案件は、ダイビルがこれまでベトナムで培ってきた不動産事業の知見を活かして、開発を主導するものです。
不動産事業は、現地に根付き、いち早く情報を入手することが優良物件への取り組みにつながります。足場を築くことができたこのベトナムとオーストラリアで今後も事業拡大を目指します。また、アジアを重点に輸送にとどまらない大型案件を当社グループの総合力を発揮して獲得することを目指す「地域戦略」の一環として、他国でも市場開拓を進めます。
当社は、海運市況の変動に対する抵抗力をつけ、安定した利益を上げていける事業ポートフォリオへと組み替える「ポートフォリオ戦略」で、非海運事業の強化を進めています。この戦略に沿って不動産事業を拡大し、当社グループの経営の安定性を一層強化していきます。